高橋愛写真集『愛ごころ』

表紙をデザインした人はたぶん天才。白色のレトロ調(なんていう字体?行書体?)で『愛ごころ』。ピンク色の角が丸い明朝体で『高橋 愛 写真集』。これだけのことなのに左下に小さめのサイズで配置することですごくセンスを感じる
「えっと今回は、控えめで清楚な田舎の天然美少女高橋愛というイメージで」みたいなプレゼンがなされかどうかは知らない。天草地方という素朴なロケーション、どの写真にも田舎町のレトロな風景が広がり、そこで地元の美少女を演じる愛ちゃんが見るものに絶妙な距離感を作り出してくれる。真っ直ぐに伸びる農道に座り微笑む姿、引き攣りながら地元の子供と並んでみたり、あまり美味しそうには見えないチャンポンを無理やり口に入れてハイチーズ。これらはスナップショットを高価なカメラで本格的に撮るという贅沢な試みに拍手を送るべきかも
かと思えばモラトリアムっぽい雰囲気が漂う古い家屋、教会、映画館、教育会館。ここに登場する愛ちゃんはサナトリウムから抜け出てきたような幻想的な少女。男はこういうのにめっぽう弱い。決して近づいてはいけない存在だと認識しながらも気になって気になって仕方がない存在。最終的には彼女は死と向き合って敗れ、そっと別世界に飛び立っていく。まあよくある設定だけど男は本能的にそういうおとぎ話のような世界に憧れていたりする。愛ちゃんは何かの役になりきるのが好きそうだから、喜んで撮影に臨んだんじゃないのかな。スタッフもそのあたりの雰囲気作りは心得ていて、「これはがんばらんと」と役に入って行く愛ちゃんが想像できる
それくらい写真集の出来が良かったと伝えたいわけで、痛い妄想、と4文字で片付けられるとこっちも辛いw
ここまで昭和の匂いのする建築物が似合うアイドルは『時をかける少女』の原田知世以来。お前いくつだよと言われようがこれだけは譲れない。尾道という土地に特別な思い入れもあって相乗効果であの映画は私の中で神格化しているんだけれど、大林監督の尾道三部作の中では群を抜いて素晴らしい映画だと思う
乱暴なこじ付けになるけれど『愛ごころ』を見てると80年代の角川映画を思い出す
白黒で1枚、セピアで1枚。両方とも何気ないショットだけどこれは従妹っぽい。久しぶりに親元の田舎に帰ったら小学生だと思ってた従妹が成長して美人さんになっていてビックリって感じ。そういうの狙ってフィルターかけたのかなと私は勝手に思ってしまった


4冊目ってことでソロデビューの代わりに与えられた愛犬用のチューイングガムみたいなものなのかなと思ってたけれど前作『わたあめ』に負けず劣らず素晴らしい写真集だった。水着カットについては私はなくても特に不平不満を言うタイプではないらしい。この考え方は異質なのかどうかはわからない。18歳でアイドル歌手という職業についてるわけだから水着カットを求められるのは当然だ。しかし、肌の露出度に比例して写真集の価値が高まるってわけではないし、ビキニ着たからって急激にエロ度がアップするわけでもない。そもそも、そんな正論が行き交う舞台にはヲタという人種は存在していない
推しメンの彼女らしさ、ありのままの素顔が垣間見れるカットが数点あればそれだけで満足できるはず。まあぶっちゃると綺麗に撮ってくれればいいやって感じかな。そんな弱み?を上手く利用してソロメン写真集を乱発するワニさんの商いはビジネスモデルとしては優秀だと思う
で、唯一愛ちゃんの要求が受け入れられたカットは表紙カバーをめくった裏と表のベビードール。なんかこれだけ違和感あるなと思ってたんだけど、愛ちゃん自身も気に入ってるらしいし変身願望という女性の性に従った思い切ったカットだと思う。などとまた勝手なことを


最後に個人的に好きなカットを挙げるなら本編では両手を顔の輪郭にあてて覗き込んでるようなドアップ。もう一つ、愛の地図で車のハンドル越しのサルっぽい変顔。どうも私はこの手のカットに弱いらしい